茂原市(もばらし)
外房地域をけん引する茂原
茂原市はその大部分が九十九里平野になっており、その気候は年間平均気温15℃前後と温暖なものの、夏場は猛暑日になることも珍しくありません。古くから街道の要衝だったこともあり、外房地域の人口・交通・商業・産業が集まっている地域です。
産業は、農業が盛んで市の北部・西部のほとんどは田畑になっており、稲作をはじめ特産品のネギ(本納ねぎ)をはじめさまざまな作物が栽培されています。
南関東ガス田に該当する地域でもあり、市内全域で天然ガスの掘削が行われその産出量は日本一になったこともあります。また、天然ガスと共にヨウ素を大量に含む地下水も産出し、特にヨウ素の産出量は千葉県全体で国内の80%を占め、そのほとんどを茂原市が占めているので、実質日本一だといえます。このように天然ガスとヨウ素が大量に産出されることから、市内には多くの天然ガスとヨウ素関連の大手企業の工場が立地しています。
現在の茂原市へのアクセスは、JR東日本の外房線が縦断しており、市内に茂原駅と本納駅があります。西端には首都圏中央連絡自動車道が縦断し、茂原北・茂原長南スマートインターチェンジの二つのインターチェンジがあります。国道は128号線が縦断し南部を409号線が通るなど市へのアクセスは充実しています。
地域の要衝が資源のまちになる
平安時代の茂原には貴族の藤原黒麻呂によって拓かれた「藻原荘(もばらそう)」という荘園がありました。「藻原」の意味は湿地が多い「藻の原」という意味で、江戸時代に「藻」の字が「茂」に変わりました。
鎌倉時代に清澄山で立宗した日蓮が鎌倉に向かう途中、豪族の斎藤兼綱の館に滞在し信者に初めて題目を唱えました。それに感動した兼綱が1253年(建長5年)に邸内に仏堂を建てたのが現在の「藻原寺(そうげんじ)」の始まりで、「茂原」という名前の由来はここから来ているといわれています。
荘園は戦国時代に消滅し、里見氏に属していた黒熊大膳が「本納城」という居城を作りましたが、北条氏に属していた酒井氏に滅ぼされ、その後徳川氏の直轄領になり本納城は廃城になりました。
江戸時代になると徳川家康の家臣の大久保治右衛門忠佐が治め、毎月4と9のつく日に開かれる六斎市(ろくさいいち)が始まりました。その後、茂原は旗本の知行地として統治され、船橋から館山までを結ぶ「房総往還(ぼうそうおうかん)」の要衝としても機能し、発展していきました。
江戸時代に地域の要衝として機能していた茂原でしたが、1891年(明治24年)に大多喜町で醤油醸造を営んでいた山崎屋の太田卯八郎が、井戸掘りをしていた際に天然ガスを発見したことがその後の茂原の発展に大きく寄与し、資源に恵まれた事で天然ガスとヨウ素関連の立地の始まりにつながりました。
太平洋戦争中の1941年(昭和16年)には軍需工場が造られた他、茂原海軍航空基地も造られ特攻隊の出撃基地になっていました。戦後は基地の関連施設だった場所は小・中学校など別の施設や工場用地などに変わっていきました。
現在残っている数少ない戦争中の名残は、物資や装備などを守るシェルターとして造られた「掩体壕(えんたいごう)」で、20基ほど造られた中のほぼ半分は残っています。
ロケツーリズムを活用し「シティ―プロモーション」に取り組む
「日本さくらの名所100選」にも選ばれた市内中心部にある茂原公園は、毎年桜の季節には「茂原桜まつり」が開催され、多くの花見客を集めています。また、7月の関東三大七夕まつりのひとつ「茂原七夕まつり」は、関東の夏祭りとしては来場者70万人を超える有数の規模を誇っています。
桜まつりや七夕まつりで有名な茂原にも高齢化の波が押し寄せていますが、人口減少問題の対策として積極的にシティ―プロモーションを展開しています。市民が愛する場所、自然、施設、イベントなど、有名な物からあまり知られていない穴場までを発掘する「もばら魅力発掘ワークショップ」や体験ツアーキャラバンを実施したり、ワークショップから上がったものをまとめた『「ここがオススメ茂原の「いいトコ」145』を発行しています。
さらに2018年(平成30年)には「千葉もばらロケーションサービス」が活動を始め、テレビ、映画をはじめさまざまな映像作品にロケ地として協力することでロケツーリズムを推進し、茂原市の「シティ―プロモーション」で地域活性化を目指しています。
2022年(令和4年)1月には「産業観光とロケ地巡り」の視点で茂原市の魅力を発信する2日間にわたるモニターツアーが企画され、天然ガス関連の施設の見学やロケ地巡りを行いました。茂原市は都心から1時間で移動できる好立地や「日常の風景がある街」、そして官民一体の取り組みで多くのロケ地として利用されることで、茂原を知ってもらう「シティ―プロモーション」として機能し、ひいては有名なまつりとの相乗効果で人口減少対策の上げることが期待されます
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(2022/5/10)