Chibabiz.com
千葉県企業の情報サイト
〈チバビズドットコム〉

HOME ぴかいちば チバビズ探訪 ちばのたね ホームページ道場 バックナンバー チバビズ・マルシェ
チバビズ探訪 組合・団体活動情報
チバビズ探訪
千葉のビジネスを活性化する団体や活動を
歴史や背景、課題や展望など
様々な角度からご紹介します。

【ちばのへり】
 海と川に囲まれた千葉県の「へり」には何があるのか。ビジネスの種が見つかるかもしれません。そんなビジネスの種を見つけるため、「ちばのへり」コーナーではそんな「種」を探してご紹介します。
Vol.85 【ちばのへり】リアス式海岸
リアス式海岸が勝浦にもたらす恩恵
温暖 海の幸 観光 景観
プレートが生み出した勝浦のリアス式海岸
 「リアス式海岸(リアス海岸)」とは、河川などが削った深い谷間が海面の上昇によって陸地が水没して出来た地形で、入り江や湾が繰り返しています。そのため山の谷間に位置する湾の入り口の水深は一般的な入り江よりも深く、奥に行くにしたがって幅が狭く水深が浅くなっています。
 また、湾の周りは小高い山に囲まれ奥が浜辺になるため、風の影響を受けにくく波が穏やかで人が住みやすい条件が整っています。更に浜辺から少し離れるだけで深度が深いので船を係留しやすいため、漁港を作るにも最適な地形だと言えます。日本でリアス式海岸としてよく知られているのは、東北地方の「三陸海岸」三重県の「伊勢志摩」福井県の「若狭海岸」などがあります。
 千葉県の沖合は「太平洋プレート」と「フィリピン海プレート」が「ユーラシアプレート」に沈み込む三つのプレートが重なる世界でも珍しい地域です。このため1703年(元禄16年)の「元禄地震」や1923年(大正12年)の「関東大震災」など過去に発生したプレート沿いに発生する大地震の結果、南房総では地殻が隆起して新しい土地が生まれています。このようにプレートによる地殻変動が大きいため勝浦湾の東西に広がる地域にはリアス式海岸が誕生し、海岸から少し内陸に入った場所には「房総丘陵」が広がる地形になっています。
県境の江戸川と利根川
三つのプレートの沈み込みが見える千倉町の屏風岩
勝浦のリアス式海岸

リアス式海岸がもたらす日本三大朝市
 リアス式海岸の勝浦湾は、奈留加海(なるかみのうみ)と呼ばれた所と伝えられ、転じて鳴鹿湾(なるかわん)と呼ばれるようになり、鎌倉時代後期に書かれた和歌では三日月の光が勝浦湾の底に届く美しい景色を詠った歌があった事から「三日月湾」とも呼ばれていました。このように美しい景色は、三つのプレートの活動によって生み出されていました。
勝浦湾の東側にある八幡岬の突端にある「平島」は、元は「富貴島」という島で現在勝浦市街にある「遠見岬神社」が元々あった所で、「元禄地震」によって海没してしまい、神社は現在の場所に移設され、今は鳥居だけが残されています。
 また、勝浦湾の西側にせり出す「明神岬」は、複雑な自然の造形に惹かれた文人墨客などが訪れる場所でした。大正時代初期にはこの風光明媚な環境を生かし、別荘地にする計画が浮上し、「理想郷」と呼ぶようになった事から「鵜原理想郷」と呼ばれるようになりました。残念ながら別荘地になる計画は実現しなかったものの、現在は気軽に回れる1周2.3km程のハイキングコースになっており、多くの観光客が訪れその景観を楽しんでいます。
 勝浦のリアス式海岸は、美しい景色の他に食にも恩恵を与えてくれています。周知の通り勝浦市は12の漁港を有し、水揚げ高も県内トップクラスで、千葉屈指の漁業の町でもあります。水揚げされる多くの魚のなかでもカツオの水揚げ高は、2024年(令和6年)8月時点で1位の気仙沼港が19,979tでそれに次いで勝浦が5,086tと全国屈指の水揚げ高を誇っています。
 また、リアス式海岸がもたらす食の恵みのおかげで、漁港周辺には430年続く「勝浦朝市」が毎日開かれています。朝市が始まったのは1591年(天正19年)と言われており、当時の勝浦城主「植村土佐守泰忠(うえむらとさのかみやすただ)」が漁業と農業の奨励とともに、農・水産物交換の場として開設したものとされ「日本三大朝市」のひとつになっています。現在の朝市は若手の出店者が中心となって、フリーペーパー「あさナム。」の発刊や、平日限定のワークショップなども行われるようになりました。
矢切の渡しと香取神宮
かつて富崎神社があった平島
「鵜原理想郷」と呼ばれている明神岬

千葉県県境
勝浦の朝市
勝浦漁港

今も昔もリゾートと観光はリアス式海岸の恵み
 勝浦が夏涼しいのはリアス式海岸になっている地形のため、海風の影響で水温が低い深い所の海水が海面に上がってきて海面の水温が低いためだといわれています。気象庁が発表した2024年(令和6年)の8月の平均気温は東京が29.0℃で勝浦市は25.9℃、一方最高気温も東京が31.3℃に対して勝浦市は29℃と30℃を越えていません。更に過去のデータをみても、勝浦市では観測が始まった1906年(明治39年)以来35℃を越える猛暑日を記録した事は1度もなく、明らかに東京よりも涼しい事が分かります。また冬も1月の平均気温で比較すると、東京は5.4℃に対して勝浦は6.8℃と冬は東京よりも暖かいといえます。昨今は温暖化の影響で猛暑が続いていますが、勝浦は真夏の気温が30℃を越えない事、また冬の気温も東京より暖かい事などで、かつて「鵜原理想郷」が理想の別荘地を目指したように、今は別荘や移住地として注目が集まっています。
 また、元々海女や漁師のために冷えた体を温めるメニューとして作られた「勝浦タンタンメン」は町おこしのために開催されているB級グルメのイベント「B-1グランプリ」で2015年(平成27年)の第10回大会でグランプリを獲得し、全国的に知られる事になりました。「勝浦タンタンメン船団」に加入している正規の勝浦タンタンメンを出す店舗は、地元客を始め「タンタンメン」を求めてやってきた観光客で行列が出来る程人気になっています。
 市内の海域公園エリアには1980年(昭和55年)に房総の海中景観を見えるようにするため、「海中展望塔」が建設され、更に1999年(平成11年)3月に千葉県中央博物館分館として「海の博物館」が作られて観光客を集めていましたが、勝浦市は2020年(令和2年)に新たな観光客を迎えるため、勝浦市はレストランにスパを併設した官民共同の施設「edén」をオープンし、新たな観光客の取り込みを図っています。
 このように三つのプレートが生み出した勝浦のリアス式海岸は、気候、景色、食材と豊富な恵みをもたらし、勝浦はそれを生かして移住者や観光客を更に集めていくことでしょう。
古利根沼
房総丘陵に開発された別荘地
観光協会内にある勝浦タンタンメン船団企業組合

(2025/4/10)
チバビズ探訪 バックナンバー
バックナンバーの一覧はコチラ
HOME ぴかいちば チバビズ探訪 ちばのたね ホームページ道場 バックナンバー チバビズ・マルシェ
お問い合わせはこちら

チバビズドットコム制作委員会
株式会社 翠松堂BTL
© 2017 chibabiz.com Production Committee
トップへ戻る