千葉の魚を海外に届ける
有限会社大福商店
千葉県は親潮と黒潮がぶつかる地点なので、魚種も豊富で海の恵みに恵まれた土地です。
有限会社大福商店のある鋸南町は、その千葉県の南側、南房総の浦賀水道に面し、江戸時代の浮世絵師菱川師宣の生誕の地としても知られ、北部には「地獄のぞき」の観光地として有名な鋸山がそびえ、日本三大水仙生産地になっている特産品の日本水仙は、その昔「元名の花」として江戸に運ばれていました。
我が社は1953年(昭和28年)に製氷工場として創業し、その後水産加工工場の設立、冷凍工場へと創業から65年の間に事業を進化してきました。
現在は、鯖や鰯をはじめとした千葉県内で水揚げされる魚を冷凍し、国内の加工業者向けの販売、海外への輸出、他に加工品の製造・販売を中心に事業を展開しています。また水産氷の製造、漁港への販売も創業以来続けています。
創業以来続けているのは製氷業で、県内の漁港に水産氷を販売しています。水産氷とは漁港で水揚げされた魚を冷やすための氷で、県内には何社かの競合先が存在します。また、最近では漁協などでコインを入れるとフレークされた氷が出てくる全自動の無人製氷設備が増えているので、我が社が販売している130キロを超える大きな氷の需要は落ちてきています。漁港の水揚げが多い時や、魚の輸送時はフレーク状の氷ではダメなため、私たちの作っている氷が必要になります。しかしその需要は、漁港の水揚げ量によって大きく左右されます。
現在の主力商品は冷凍した鯖や鰯の販売で、内房・外房の各漁港で水揚げされた魚を仕入れ、冷凍して販売しています。
最近は、鯖の水煮缶などがブームになっているため、大手の水産加工業者は争って買い付けています。千葉県内で鯖が大量に水揚げされるのは銚子漁港です。一日に5,000tや6,000tの漁が水揚げされますが、シケなど自然の影響もあり、週に一度位しか水揚げされません。私達も銚子で水揚げされた鯖を10t~20t買い付けますが、需要が多いので価格も安くはありません。
買い付けた後、魚は鋸南町にある我が社の冷凍工場へと運ばれます。定置網で獲った魚は、様々な魚種が混じっているものを、人手で魚種やサイズごとに選別し、鮮度の良い物は加工または輸出用と養殖魚の餌用に分類し、直ぐにマイナス30度以下の温度で冷凍します。
冷凍魚の販売は水揚げが無ければ仕事にならないため、少しでも安定した仕事量を確保するため魚の加工も行っています。
東京湾で獲れるコノシロ(寿司ネタで「コハダ」)を開きに加工して冷凍し、寿司用として出荷しています。他に加工商品として定番化しているのが、魚の落とし身です。落とし身とは、魚の骨と皮を分離し、すり身状にミンチ加工した商品で、鯵をはじめ鰯やコノシロ、また、南房総では馴染みの薄かったシイラ、クロシビカマスなどを使って製造しています。
鯵の落とし身を使った郷土料理の「さんが焼き」は、地元の水産加工会社に協力して商品化し、大好評を得ました。
他にも我が社の鰯やコノシロの落とし身を使って作った団子汁は、道の駅などで販売され、テレビでも紹介された事から大好評をいただいています。
このように加工製品の製造は、水揚げされたまま冷凍し、解凍して加工、また冷凍して在庫することで、天気や季節に左右されず安定して加工することができ、天気に影響される不安定な仕事を補う大切な仕事です。
鯖の需要は国内需要に加えて近年は海外輸出も増えています。海外でも八戸から銚子までで獲れる鯖はすごく人気があり、特にアフリカからの注文が増えています。銚子には県外の加工業者まで進出し、最新鋭の加工工場を建設し国内外に販売しています。
私達が銚子漁港から買い付けると、銚子の業者と違って運賃がかかって高くなってしまいますが、それでもタイやベトナムなど東南アジアでは我が社の魚は人気があります。品質が良いのはもちろんのことですが、はじめは東南アジアの各地のバイヤーたちが、「大福」という縁起のいい名前に注目してくれたことから、今では『「大福」の魚がいい』と評価をしてくれるようになりました。
これからは地球温暖化や、魚種交替という獲れる魚種が交互に増加する減少などの影響を受けながらも、安定して事業を続けていくために、コノシロなど地元東京湾で獲れる魚の加工にもっと力を入れていきたいと思っています。
地元の食材に期待して観光客は南房総にやってきます。その中でも半分以上は魚を食べたいというお客様でしょう。我々は表舞台には登場しませんが、落とし身などの加工品を飲食店などに提供し、観光客にもっと千葉の魚を食べていただくよう今後も努力していきます。
中華料理店などでさかさまの「福」の字が貼ってあるのを見かけることがあると思います。これは倒福といい、縁起物だそうです。その謂れは、中国語で「福」を逆さまにすると、「倒福 dao fu」と書き、この「倒dao」と同じ音を持っているのが、「到dao」で、「やってくる」を意味していて、同じ発音である事から洒落でさかさまの「福」となったそうです。
『「大福」という名前を付けれくれた親に感謝しなくては』とおっしゃっていた鈴木社長。今や「大福」の文字だけでなく、「一」のマークでも「これがいい」とブランド化しつつあるそうです。いつしか世界中に「大福」の文字、「一」のマークが広まっていく事でしょう。