●Vol.46 【勝手に注目】酒蒸し蛤 いかだ焼き本舗 株式会社正上
酒蒸し蛤 いかだ焼き本舗
株式会社正上
古くから日本人に食べられてきた蛤
蛤は、北海道南部から九州にかけての日本各地で獲れ、古くは一般的な二枚貝の総称として呼ばれていました。奈良時代に書かれた「日本書紀」にも天皇に献上した料理に蛤の記述があり、これは日本最古の料理の記録とされているようです。
平安時代に貴族の間で広まった「貝合わせ」という遊びは、蛤の貝殻の内側書かれた花鳥や人物などの美しい絵が見えないように裏返して並べ同じ絵柄同士を合わせて遊ぶもので『源氏物語』にも登場するなど、身だけでなく貝殻までも遊びとして使われていた事から、蛤がいかに親しまれていたかが伺えます。
江戸時代には「その手はくわなの焼き蛤」と洒落にも使われるほど東海道の宿場「桑名」の焼き蛤が名物になり、焼き蛤の産地として知名度を高めていました。
このように日本人にとっては古くから親しまれ食されており、加曾利貝塚からも多くの蛤の貝殻が出土している事から千葉でも古くから食されていた事がわかります。
九十九里は今でも鰯と共に蛤が名物になっており、「九十九里地蛤(くじゅうくりじはまぐり)」として千葉ブランド水産物の認定を受けています。その食べ方は「浜焼き」と呼ばれるシンプルに網焼きしたものや、祝いの膳にも使われる「潮汁」などの他、身を串に刺してタレを付け焼く「焼き蛤」が名物になっています。
創業1800年の老舗「いかだ焼き本舗 株式会社正上」
千葉県香取市の佐原は街を流れる小野川を中心に古い建物が並ぶ「小江戸」として観光地になっています。その小野川沿いで千葉県の有形文化財に指定されている「いかだ焼き本舗 株式会社正上」は、1800年(寛政12年)創業の老舗です。
「油正」という屋号で油全般の製造販売からスタートし、三代目になって「正上醤油」として醤油醸造業をはじめ、醤油や米を江戸で販売し、江戸からは生活物資を仕入れ地元で卸すなど多角的に商いをしていました。
太平洋戦争後の1950年(昭和25年)には正上醤油株式会社として法人化、1958年(昭和33年)には自社の醤油を使って家伝として作られていた「わかさぎのいかだ焼き」を商品化し販売するようになりました。この「いかだ焼き」という名前は、「わかさぎ」を串に刺して並んでいる様を「いかだ」になぞらえて付いた名前だそうです。
1987年(昭和62年)には新しいニーズに合わせるべくレトルト食品、真空加工食品、チルド食品など独自の技術で次々と新しい商品を開発しています。
その功績から2016年(平成28年)には「フード・アクション・ニッポンアワード2016」で蛤の酒蒸しが「究極の逸品入賞100選」に入賞。2017年(平成29年)には「蛤 あさり串詰め合わせ」で「日本ギフト大賞」の千葉賞を受賞、更に「九十九里浜蛤酒蒸しお吸物セット」で「おみやげグランプリ2018」で「グルメ賞」、を獲得するなど、その味と加工技術で高い評価を得ています。
「焼き蛤」と「蒸しはまぐり」を食べてみた
今回注目したのは正上さんの「焼き蛤」と「蒸しはまぐり」で、いずれも常温保存できる真空パックで販売されていました。
聞くところによると、正上さんの真空包装の技術は独自に開発された技術だそうで、それぞれの商品に最適な状態で真空または含気(若干空気を残した状態)で長期間保存できるようになっています。購入した商品はいずれも賞味期限は3か月になっていました。
まず試食したのは、焼き蛤です。見た目がしょっぱそうなので、日本酒に合うだろうと思い、酒のつまみとして試食してみました。ひとくち食べてみると、タレの味が勝っていると思っていましたが、思っていたよりしょっぱくなく、蛤の味がしっかり感じられます。酒のつまみとしても最適でした。この味が出せるからデパートで定番の焼き蛤になっているのは納得でした。元々醤油メーカーで醤油を知り尽くしているからこそ、この味が出せるのかもしれません。
もう一方の「蒸しはまぐり」は、パッケージに「『はまぐりごはん』や『お吸い物』」などの料理に」と書かれていましたが、真空パックの中に蛤の出汁も一緒に入っているので、この出汁も使ってシンプルにお吸い物にしてみました。
パックから蛤を取り出すと、既に調理されているので蛤の貝は簡単に開きました。手毬麩と三つ葉を添えて蛤の汁を入れただし汁を注げば完成です。作るのも簡単で、シンプルな食べ方ですが、蛤の味がよくわかり、身も柔らかくおいしい逸品になりました。きっと独自の加工法だからこのように仕上げる事が出来たのでしょう。
蛤なので安い商品ではありませんが、美味しく手軽に食べる事ができる逸品だと思うので、是非お試しあれ。
焼き蛤はつまみとしてネギ炒めと人参しりしりを添えて
蒸し蛤は手毬麩と三つ葉を添えてお吸い物に
(2022/1/7)