部門を立ち上げる
入社はしたものの、しばらくはあと継ぎということが決まっていない、つまり先が決まっていない状態で過ごしていました。祖父も高齢でしたが元気だったので、幹部社員に任せることはせずに何事も自分で進めている状態でした。
十数年経った頃、このままでは何も決まらないと自分で動くことを考え、まず私はその時在籍していた管理部の副部長職に就けてくれないかと祖父に交渉し、なんとか了承してもらいました。その後今後の事を考え祖父が一人で握っていた人事権を組織化するため、また人材育成のため人財開発部の設立を直訴し、部下もいない状況でしたが部門を立ち上げ、数年後更に管理部が持っていた機能を分離させ、総務部を立ち上げました。
祖父もこの頃になってくると、私を認めてくれるようになっていました。しかし、祖父が90歳になった頃肺がんが見つかり、これで「自分の寿命が決まった」と後継者指名にあわただしく動き始めました。そして祖父はすぐに社長を退任して代表権のある会長に、当時の専務を社長に、私を副社長にし、私が後を継ぐための道筋をつくってくれました。
それまでは全く先が見えない状態でしたが、副社長に指名されたときにやっと夢だった『社長になる』という道筋ができたと実感しました。それは今から8年位前のことでした。
新たな分野への挑戦
我が社は、電磁鋼帯という磁気特性のある鉄を使って、用途が様々なモーターコア(鉄芯)を製造しています。モーターそのものの性能は、このモーターコアにも大きく影響を受ける重要な部品です。国内でも数少ないモーターコアを製造するメーカーの中で、我が社の特徴は材料供給をしてくれるメーカーに縛られることなく、取引先のご要望に沿って材料の調達から安定した製品作りを行っていることです。現在は電磁鋼帯のスリット加工、そして家電製品向け、また車載関係のモーターコアを製造しています。
これからの時代は、モーターが今までも考えつかなかったような、思ってもいなかったような製品にも使われるようになると思います。そしてモーターとはあまり縁のなかったような会社が参入してくるかもしれません。これからはこういった新しい需要にも積極的且つ柔軟に取り組んで、安定した品質の製品作りを続けていきたいと思っています。