ミネラル豊富な塩で
九十九里の伝統を守る。
完全手作りの塩作り
九十九里海の塩プロジェクトは、九十九里の海水を使って私自身が手作りで塩を製造・販売しています。
垂れ下げた漁網に海から汲んできた海水をひしゃくでかけ、したたり落とすことで風と太陽の熱で水分が減り、塩分濃度が上がります。それを釜に入れ、薪の火力で4日間かけてじっくりと過熱、蒸発させることで塩が結晶化し「にがり」と分離します。こうして出来た塩を天日で乾燥させると1tの海水から約20kgの塩を作ることができます。
手間をかけ、自然の力を使った方法なので、時には塩が思いがけない芸術的な形で結晶化することを目にすることがあります。
「山武の海の塩」は製造過程で機械を使っていないため、九十九里の海水に含まれる多くのミネラルを壊さずに塩ができ、味が尖っていません。また、ミネラルの中で特にカルシウムが豊富で、他の手作りの塩の10倍近く、1,300mgも含まれているので甘みを感じることができます。
こうして出来上がった塩は、袋詰めして道の駅など県内各地で販売されている他、千葉県内のパン屋さんや和菓子、洋菓子、飲食店など様々な業務用の塩としても使っていただいています。
九十九里の塩を知ってもらう
元々私は大学を卒業して銀行に就職し、結婚を機に退職して専業主婦をしていました。子育ての間は小学校や中学校の非常勤講師や事務職員などをしていましたが、子育てがひと段落して、パートタイマーで銀行に復職した後、正社員として働くために転職して、山武市観光協会で働くようになりました。
「山武の海の塩」は、山武市と山武市観光協会が「九十九里の塩づくりを観光客に体験させる試み」と、2011年(平成23年)3月11日に起きた「東日本大震災の被災者の緊急雇用」の二つの目的で、2014年(平成26年)に国の補助金を受けた事業として始まりました。
この事業を実際に行った方から、「手伝ってほしい」と乞われたことが私の塩づくりに関わるきっかけとなりました。今まで様々な仕事をしましたが、「物を作る」という経験はこれが初めてでした。
観光協会で行った3年間の事業は近くの小学校や興味のある方を中心に実施され、「昔の塩づくり」と一般的な塩の粒の大きさや味の違いを体験してもらうだけで、販売はしていませんでした。
そのうちに「これはどこで買えるの?」と聞かれるようになり、「買いたい」というご要望がでてきて、2年後にようやく商品化し発売できるようになりました。