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千葉のきらりと光る
社長へのインタビューをご紹介。
社長の熱い思いを語っていただきます。

パンを通して
食に関する情報を発信する。
自家製加工肉まで手作りのパン屋
 casse-tête(カステット)は、バゲットなどハード系のパンを中心に製造・販売している昨年2019年(令和元年)12月にオープンした店です。
 casse-têteという言葉はフランス語で「パズル」という意味で、ジグソーパズルのピースのように「いくつものピースが集まり完成する=力を合わせて目標を成し遂げる」という思いを込めて名付けました。
 起業するにあたって、最初は自宅のある市原市で探しましたが良い物件が無く、車で通える範囲で探していた時に見つけたのが現在の場所、木更津市でした。この辺りは若い方が多そうで、更に木更津市はアクアラインで東京方面からの観光客も多く、且つ少し車で走ると森や自然があるという所が大いに気に入りました。
 店にはしっかり噛み締めると味わいのある「食事パン」や、自家製加工肉を使ったサンドイッチやクロックムッシュといった「総菜パン」。ほかにもクリームパンやタルトといった「甘いパン」など30種類前後のパンを作っています。
 一般的なパン屋では、様々な既製品を使って50種類位のパンを作っている店があるようですが、パンはもちろん自家製加工肉まで手作りで既製品をほぼ使わないため、どうしても手間がかかってしまいます。
 現在来店してくださるお客様は30代から40代が中心で、特に「ハード系が好き」というお客様が多く、ハード系のパンの種類を多く置いている店がなかったので「うれしい」といっていただいています。
株式会社カステット
動物飼育員志望がパン屋になる
 私の父は自営で看板製作の仕事をしていましたが、私も兄もそれを継ぐ気にはなりませんでした。
 高校を卒業して動物飼育員をやりたいと思って、専門学校に行く学費をためるつもりで1年間フリーターをやっていました。その間、車の免許取得と購入、必要だと思ったスキューバーダイビングの資格取得などで、1年しても思ったほど貯めることができませんでした。いつまでもフリーターをしているわけにもいかず、一度就職し、それでも飼育員をやりたかったら専門学校に行こうと考えました。
 就職を具体的に考えた時、サラリーマンになった自分をイメージできず、またデスクワークもしたくありませんでした。自営業だった親を見ていたからか、体を動かす仕事で将来は独立できる仕事を選ぶことにしました。
 食に対してこだわりがある母の影響からか、料理人になることも考えましたが、そうなった自分をイメージすることができず、思いついたのがパン屋でした。子供の頃近所にあったパン屋が午前中で売り切れてしまうのを見て、日々買っていただけるパン屋の方が独立した場合に商売しやすいのではないかと考えたからでした。そんな事でパン屋に就職することになり、実際にやってみると性に合っていたのに気づき、飼育員の道に進むことをやめてそのままパンの道に進むことにしました。
 働き始めてパン作りの基礎ができてきた頃から、勉強のために食べ歩きをするようになりました。そんな中インターネットで食べ歩きの店を探していた時に偶然見つけたのが、大阪にあるパン屋のオーナーの長文で書かれたブログでした。
 読んでいくうちにパン作りに対する思いとその熱量、発言ばかりではなく、実際にも体現していることに動かされ、その人の元で働いてみたいと思うようになりました。なかなか採用してもらえない店でしたが、運良く転職することができました。
 入店後はメインのポジションを担うことはありませんでしたが、職人の厳しさと「信念を持つことの大切さ」や「生産者さんとの繋がり」等を学び、それが今のベースになっています。
株式会社カステット
「食」に対する考え方を学ぶ
 大阪で働いていた時のオーナーは、「パン職人の社会的地位(役割)が低いのは、パン業界のことしか考えていないからだ」「パン職人がパンだけを作っていればいいのではない」とそれを体現した行動をしているのを見ていたので、自分がパン屋を始めるにあたって、ただ「パンが売れて良かったね」だけではつまらないと思っていました。
 自分は職人肌ではなくパン作りだけにまい進するタイプではないので、独立するためのもう一つの特長になるものを持ちたいと思っていました。そんな時に知ったのが、ハム、ソーセージ、パテ、テリーヌなどの食肉加工の総称「シャルキュトリー」という言葉でした。
 「シャルキュトリー」のことを調べてみると自分でもできそうだと思えたので、実際に試作をしては当時の同僚に食べてもらったりしていました。評判は悪くなかったので、そのうち次のステップアップとして「シャルキュトリー」という肉の分野でもキャリアを積んで自分の特徴にしようと考えるようになっていきました。
 いつものように食べ歩き先を探していた時、たまたま見つけたのが東京のレストランのオーナーのブログでした。ブログには北海道で作られた余剰野菜を使った総菜屋を経営している事や、食品ロスに関しても言及した内容など、見ているうちに次第にオーナーの「食」についての考え方に惹かれるようになりました。このオーナーのレストランにも食べ歩きで行ってみたところ一番おいしい店だったことも相まってこのオーナーの店で「シャルキュトリー」としてのキャリアを積みたいと思いました。ある時、いつものようにブログを見ていると求人が載っていたのを見つけ、シャルキュトリーとして働かせてもらえるチャンスを得て、キャリアを積むことができました。
 このレストランのオーナーの「食」に対する考え方が自分にとって一番影響を受けた考え方でした。
 その後独立の機会を見据えて別のパン屋に移り、店長を務めさせていただいたことでマネジメントを学び独立へと進めるようになりました。
株式会社カステット
背伸びせず且つ芯は外さず
 食品の生産地と消費地が近ければ輸送時に発生する二酸化炭素なども削減できるなど環境負荷を減らせる「フードマイレージ」という考え方にも通じますが、これからも千葉でいい物があれば積極的に使っていきたいと思っています。
 現在は地元の食材を使っていますが、意識の高い生産者同士の繋がりで、新たな生産者の方を紹介いただけるなど更に広がってきています。
 また千葉の物を使う事で生産地にもすぐに行くことができ、生産者の皆さんとも直接話ができるというメリットもあるので、これからも増えていくのではないかと思っています。
 「食」の現状は、調べれば調べるほど問題が多く、その原因は我々の食生活や生活様式が招いているという事です。それを「変える、変えない」はその人自身が決めることですが、まずは「知っているかどうか」だけでも違ってくると思うので、少しでも変わるなら発信した意味があるだろうと思っています。
 パン作りにも理想はありますが「何が適切かを考えて取捨選択する」食材全てをこだわり抜いてパンを作ったら、現在のパンの値段は倍にもなってしまいます。でもこの店は、「何も知らずに入ってきた普通のお客様がいつでも買える値段」でありたいと思っています。また食のことを本当に伝えたいのはそういうお客様たちで、「パンを通して食の事を広めたい」という目的に近づいていくにためには「こだわり」はほどほどに、ある程度間口の広い対応が必要です。お客様に対してハードルを高くしすぎないように、自分も「背伸びせず且つ芯は外さず」できる事からやっていきたいと思っています。
 店を開いてまだ半年なので当面は、経営を安定させることと、そして新たなチャレンジができる余裕を作ることを目標に、これからも店やSNSなどを使って「食」に関する情報発信をしていこうと思っています。
株式会社カステット
株式会社カステット
企業名 株式会社カステット(Casse-tête)
事業
概要
パンの製造販売
住 所 〒290-0035
千葉県木更津市ほたる野1-31-1エクセレントNOW102
電話
番号
TEL:0438-77-6790
H P
従業員 8名(パートタイマーを含む)
(2020/6/10)


〈編集後記〉
 パンを通して「食」に関する情報を発信していきたいとおっしゃっている國吉さん。これからも千葉県内の「食」の生産者の方々とのネットワークが広がって色々な活動に展開していく予感がします。
 江戸の台所だった千葉県にはまだまだ沢山の良い「食」があると思います。これからもチバビズで「食」に関係する方を紹介していくと思いますが、中でも國吉さんの「パン」と「食に関する情報」は注目です。
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