元ミュージシャンが取り組んだ
こだわりのパン
3日かけて生地を作る熟成パンを提供する
ベーカリーPooch は、2015年(平成27年)にオープンした京成電鉄千原台線のちはら台駅西側の新興住宅地にあるベーカリーです。
Poochのパンの特徴は、厳選した材料だけにこだわるだけでなく、通常は1日から2日でやっているパン生地作りを、あえて3日間かけて作っています。粉と水を練った「タネ」作りで1日、翌日それを他の材料と合わせてコネて1日、通常2時間程度の発酵時間を24時間かけるなど、いわば熟成パンの状態で作ります。他にも熟成パンをやっている所もあるようですが、3日かけてやる所はあまりないと思います。この作り方はパンをおいしくするものの、直ぐに生地を追加する事が出来ないのが弱点です。
現在店に並べているパンはおよそ100種類ありますが、中でもお客様に一番お求め頂いているのは食パンです。週末には30本ほど焼いていますが、それでも土曜日は予約をしていただかないと買えない状態になってしまいます。作り手が私一人で、生地作りで3日かかるなど非効率な製法なので、お客様には申し訳ありませんがその点はご理解いただきたいと思います。
ご来店いただくお客様は、近郊の住宅にお住いの方、飲食店のお客様ですが、遠方からご来店いただくお客様も少なくなく、県外では横浜、県内は大網白里市や木更津市などからもわざわざご来店いただいています。
ベーカリーPooch
週末には売り切れてしまう食パン
ミュージシャンから
パンの道に進む
私の実家は千葉市の蘇我駅近くのパン屋で、父からも「小遣いが欲しかったら手伝え」といわれ、小学生の頃から店の手伝いをしていました。元々祖母が小さなタバコ屋のような店先でサンドイッチなどを売る店をやっていて、父がパン作りの修業をしてその店をパン屋にしました。私自身パンは好きでしたが特に興味があるというわけでもなく、当時はいわば生活の一部のような感じでした。
高校に進学する時にパンを勉強する体でドイツに留学させてもらいましたが、実際には大好きなファッションや音楽にのめり込んでいました。
高校を卒業して帰国した頃は、音楽の道に進むかファッションの道に進むかは決めていませんでした。大学にも進む事も考えましたが、ドイツでは音楽やファッションばかりで勉強もしていなかったので断念し、改めて音楽の道に進もうと決心しロンドンに武者修行のつもりで渡り、本格的に音楽活動を始めました。
ロンドンではアーティストに曲を提供したり、音楽プロデューサーのような活動の他、DJ、バンドなどの活動が認められ、ヨーロッパツアーをしようという話が持ち上がりました。しかし、私のビザの問題で断念せざるを得ず、残念ながら帰国する事になりました。
帰国してからも音楽を続けていたものの、ロンドンと日本とでは音楽業界がずいぶん違っていて、ロンドンではある程度収入を得る事も出来ましたが、日本ではマイナスになってしまうほどのお金しかもらえません。この環境の差を実感しながらも4年ほどは続けましたが、違う事に挑戦しようと意を決し、建築の仕事や飲食店で働くなど色々な仕事を経験しました。
今から16~7年前に偶然パン屋のアルバイトをする事になり、そこで初めて自分が一からパンを作るという体験をしました。子供の頃から店の手伝いはしていたものの、洗い物や、「焼けたパンを出しておけ」など雑用ばかりでしたが、その店では一から店長と一緒にパンを作らせてもらえました。この経験でパン作りの面白味を改めて知ってもっと本格的にやりたいと思うようになり、そこを辞めて実家に戻ってパン作りを続けることにしました。
店内には作曲したオリジナルの音楽が流れる
音楽とパンを象徴したシンボルイラスト