アパレルから
バネ製造に転身
私は小学校1年生まで東京の西荻窪に住んでいました。父親が家を買う際に先代の社長が松戸に住んでいた事や、知り合いだった建設会社の社長に物件を紹介してもらい柏に家を買って引っ越しました。私の実家は祖父の代から煎餅屋をやっていましたが、親からも「継がなくていい」といわれていました。
私は学校を卒業してアパレルの会社に就職しました。就職して3年半位の時に、突然父が倒れてしまい、伯父から「親に何かあったら直ぐに駆けつける事もできるから、うちに来い。そして将来は後を継げ。」といわれました。アパレルの仕事から離れるのは抵抗がありましたが、転職を決心しました。
入社して伯父からは「俺が営業に行くからついてくればいい」といわれたものの、一向に連れて行ってくれる事はなく、私自身はどこに営業に行ったら良いかわからないという状況でした。当時の上司に「どうしたらいいですか?」と聞くと「そこに名簿があるからそれを見て行って」といわれるだけでした。仕方なく自分でアポイントを取って「新人の小宮山です」と営業をしたものの、図面の見方も分からない状況で、お客様から「これはできるの?」と聞かれても「出来ると思います」と答えて注文を取っていました。
入社して10年勤務しましたが、先が見通せない状況で退職して3年間は歯科関連の会社で営業の仕事をしていました。歯科の知識は全くありませんでしたが、何故か新規開拓で売上を伸ばしました。オーナーから資金関連の負担を追わない代表権の無い社長として活動し始めた矢先に、突然オーナーが亡くなってしまいました。今考えても恐らくオーナーが亡くならなければ、この会社に戻らなかったと思います。
伯父から「お前に会社を継がせるから戻ってこい」といわれ戻り、7年間仕事をしていました。本業の方が芳しくなく、リストラをするという話になり、それに反発して「私が辞める」と再度退職したのが2011年(平成23年)でした。それから6年間は知り合いの歯科技工士の会社に誘われ、再び新規開拓の営業に携わりました。途中から、独立して個人事業主として活動していました。個人経営をした事は、会社経営をするにあたり、とても貴重な経験になったと思います。
50歳になった時に伯父から「お前がやらなければ会社をたたむ」といわれ、再度入社し代表取締役になったのが2017年(平成29年)でした。
様々な形を製造しているバネ
プレス製品も製造
盛和塾で学んだ事を
経営に生かす
以前は知り合いの建設株式会社の会長に勧められ「盛和塾※」に入っていましたが、会社を辞めてしまったため、塾も辞めてしまいました。会社に復帰すると、「盛和塾」の本部理事をやっている方に「会社に戻ったのだから塾にも戻れば」と推薦していただき、会自体が解散する最後の1年だけ復帰させていただきました。
社長に就任するにあたり、社是と経営理念、経営方針を作って「このような形でやっていこうと思います」と本部理事の方に見ていただくと、社是で掲げた「愚直」だけでなく「愚直・素直・謙虚」だと助言され修正しました。出来上がったのが現在掲げている社是、経営理念、経営方針です。従業員達には「この社是、経営理念のために仕事を続けるのだ」と常に言い続けています。
引き継いだ会社の経営状態は、厳しい状況でした。銀行からもリストラを勧められましたが、経営理念に「全従業員の物心両面の幸福の追求と、地域社会に貢献すること」と掲げたので、リストラをしてしまえば、従業員たちが「よしやろう」という気持ちにはならないので、役員報酬を大幅にカットする事で従業員のリストラは一切せずに乗り越えました。
社内の改革でまず手を付けたのが「不採算の仕事」を辞めることでした。本来は普通に仕事をして採算が取れるようにしなければいけませんが、かといって簡単に「新しい仕事」を入れることはできません。忙しく働いても儲からないのは「不採算の仕事をやっているからだ」と思い、「まずは不採算な仕事をやめよう」と思いました。また、それに付随して機械も売却や廃棄もしました。
続いて「取捨選択」あるいは「選択と集中」というか、社内で生産するか外注に任せるかをはっきり決めて切り替えていきました。協力会社に製造を委託してもお客様に優れた製品を提供していくには、レベルの高い協力会社を見つける事も大切で、重要な仕事だと思っています。だから、協力会社との関係はこれからもっと強化していこうと思っています。
当社は障碍者雇用の取り組みをしていて、2020年(令和2年)には千葉県から「笑顔いっぱい!フレンドリーオフィス(千葉県障碍者雇用優良事業所)」の認定、更に2021年(令和3年)に千葉県初の厚生労働省の障害者雇用に関する中小事業主に対する認定制度(もにす認定)を受けました。現在は知的障害者が3名、精神障害者が1名在籍しとても真面目に働いてくれていて大きな戦力になっています。
また、経営的な視点で従業員の健康管理を捉えた「健康経営」にも力を入れ、2020年(令和2年)には全国健康保険協会千葉支部から「健康経営の推進による健康な職場づくり」を宣言した事業所として認定、2022年(令和4年)には中小規模法人部門の「健康経営優良法人2022」に認定されました。2023年度も、「健康経営優良法人2023」に認定されました。
※盛和塾は1983年(昭和58年)に京都の若い経営者から京セラ株式会社の創業者稲盛和夫氏に「いかに経営をすべきか教えてほしい」と依頼されたことを機に発足した会で、その後全国組織化が展開され、稲森氏が高齢になった事を理由に2019年(令和元年)の12月末に解散になりましたが、その時点で国内外合わせて100の塾、総勢13,800名にも及ぶ塾生が在籍していました。
社内に掲示されている社是・経営方針
健康優良法人の認定証