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ぴかいちば
ぴかいちば
千葉のきらりと光る
社長へのインタビューをご紹介。
社長の熱い思いを語っていただきます。

ビーズを使った日本刺繍を
世界に向けて
デザイン・刺繍・仕立てを
一貫生産する
 有限会社柏ビーズは、1936年(昭和11年)に私の祖父が浅草で創業した会社で、ビーズを使った袋物などのデザインから刺繍、仕立てまでを一貫生産している数少ない会社のひとつです。
 ビーズは球状の物、若しくは丸に近い物で穴が空いており、主に洋服など服飾の材料として使う物を総称した名前ですが、私たちが主に扱うのは「シードビーズ(種子のビーズ)」と呼ばれているもので、ガラス管を切って作る「管引きビーズ」と呼ばれているものです。
 かつては外国製の物、主にチェコで作られたビーズが流通していましたが、現在は国内にある3社のメーカーが生産している国産のビーズが主流で、私たちもそのメーカーから仕入れています。海外製に比べ日本製はクオリティーが高く、大きさが均一で色が安定していて、また色の種類も一万以上あるので、刺繍で色のグラデーションを細かく作れるようになりました。かつて父の時代では刺繍は立体感を出すために柄を膨らまして作っていましたが、重くて引っ掛かるなどのデメリットがありました。今では豊富な色が手に入るようになったため、このデメリットを克服し丈夫で3世代に渡って使っていただけるものを目指しています。
 私たちは刺繍の下地になる生地の段階から作っていくので、ベースになる生地の色とビーズの色、糸の色、隣にある色の3色が混ざり、更に色の濃淡で奥行きを作り、曲線で丸みをだすので、非常に表現力の高い物を作る事ができ、それを駆使して作るのが私たちのこだわりです。
 刺繍にはドレスにするようなフランスの「リュネビル」、インドの「アリワーク」などが知られていますが、いずれも「かぎ針」で引っ掛けて作る技術で、私たちは着物の刺繍と同じ日本刺繍の技術のため、職人の感覚でグラデーションを付ける事ができます。
 また、「ビーズの刺繍は大変だ」とクローズアップされる事が多いですが、実は立体的に仕立てていく工程も専門的な知識が必要で難しい側面を持っています。仕上がりが曲線になる物を仕立てるので、絵柄を合わせるのも至難の業で、いつもデザイナーが悩む所です。当社のデザイナーや職人は全ての工程を経験しているため、刺繍と仕立ての工程を行ったり来たりしながら仕上げていきますが、新しい形を作る時には今までの経験を生かせるものの、常に新たなハードルを越える事が多く大変ですが「それも面白い」と思って取り組んでいます。
有限会社 柏ビーズ
柏市の柏ビーズ本社・工場
本社の店舗スペース。ここで教室も開催される。

親子3代で
ビーズに取り組む
 祖父は元々浅草にあった和装小物の店で働いていたそうで、仕立て職人などをまわっている間に仕事を覚え、神田須田町に小さなところを借りて「伊勢屋」という名前で独立し、ハンドバックの製造と販売を行う店を開いたそうです。神田という場所は粋な人達が多い場所だったようで、たまたまビーズの刺繍が入った物の修理を依頼されてビーズの事を知り、袋物などに小さなビーズの刺繍を付けていたと聞いています。
 その後太平洋戦争で神田の店は一時閉店していましたが、戦後1949年(昭和24年)に現在の場所に移って改めて開業し、1985年(昭和60年)には2代目の父が代表取締役に就任しました。
 その後父は1993年(平成5年)に「千葉県の卓越した技能賞」を受賞し、製品は「千葉県指定伝統工芸品」に指定されました。更に2014年(平成26年)には厚生労働省の「現代の名工」を受賞、更に2015年(平成27年)に「黄綬褒章」も受賞しました。
 私が後継者になる事に関しては、祖父にうまい事をやられた感じです。小学校から帰ってくると家族は皆工場で仕事をしていて、そこに「ただいま」と帰るわけです。私の相手をしてくれたのは主に祖父母で、祖父は私を膝の上に乗せて「この仕事はお前がやるんだぞ」とか「ここはこういう風にやるんだぞ」と刷り込んだのがいちばん大きかったと思います。そういう「下地」があったので、小さい頃から「やらなくてはいけない」と思っていました。
 学校を卒業し、東京にある和装小物のメーカーに3年間修業に出されました。そこの会社は「更紗」が得意な会社で、他にも木綿の浴衣や半幅の帯、祭用の帯など様々な商品を扱っていました。私は社長に連れられ、浴衣の記事を染める「染屋」で工程を見せてもらったり、作った生地で作った「がま口」などの小物などの外注先も見せてもらうなど様々な工程を勉強をさせてもらえました。
 修業を終え社員として入社しましたが、丁寧に教えてくれたわけではなく、ざっと説明されただけで「あとは覚えろ」といわれ先輩の仕事を見て覚えました。また、作った製品はの直販していたので営業活動も必要でした。「どう販売していくか」も考えながら百貨店へ営業をかけたり、催事に出店して店頭に立ったりもしました。一方、社員として会社に関わるようになってからは、父と何度もぶつかって「この仕事を辞めてやる」までいった事もありましたが、2005年(平成17年)に父と交替し私が3代目の代表取締役になりました。
有限会社 柏ビーズ
2代目秀一氏が千葉県卓越した技能章を受章
千葉県指定伝統工芸品認定書

ビーズ文化を絶やさないため
教室も展開する
 現在は「ビーズの文化」が無くなりそうだと感じ、ビーズがお客様のニーズに合っているかをリサーチするために「教室」を始めました。「教室」の数は延べ200か所以上ありますが、コロナ禍だったこともあり現在稼働しているのは30か所弱になっています。教室の講師は社員の他、私ご指名の生徒さんもいらっしゃいます。
 世の中には刺繍だけを教える教室がありますが、そういった教室は決まった物しか作らないのが一般的です。私たちはお客様から「こういう品物を作りたい」という「おあつらえ」を受けてそれを形にして販売する事をしているので、生徒さんにも「刺繍をすれば、あとは全部当社で仕上げるので好きな事をやってください」といっています。
 生徒さんのなかには1ヶ月で出来上がる小さい物を作る方もいますが、3年かかってもまだ出来ていない方もいらっしゃいます。私達職人に求められているのは「綺麗に」「早く」と時間軸が付いていますが、生徒さんは「どんどん仕上げていく」のでも良いし「気に入らなければやり直せばいい」、とにかく「まず楽しむ」事がいちばんだと考え生徒さんの好きなようにしてもらっています。
 作った製品は柏の本社や日本橋の店舗で販売しているほか、デパートなどで開かれる催事にも出店して販売しています。催事にはそのまま売れるように既製品を持って行くので、そのまま買っていただければ楽なのですが、つい「もう少しここをこうしますか?」と勧めてしまうので、その結果オーダー品になってしまったりします。
 昨今では時代の流れに乗ってホームぺージでも販売するようになりました。口コミや催事で見かけた事がきっかけで、新しいお客様を得ていましたが、最近は新たな出会いのきっかけになればとSNSで発信していく事にも取り組んでいます。
有限会社 柏ビーズ
デザインは組み立てて形にしてみて確認して進める
膨大の数のビーズはグラデーションには欠かせない物

日本のビーズで作った
袋物を世界へ
 私たちの商品は「おでかけ」がないと使ってもらえないため、今回のコロナ禍では行動制限がかかり大変でした。コロナ禍はいつか治まるだろうと思っていましたが、それよりも危惧しているのは、家から出ないで満足している若者達が増えている事です。欧米では工場で働く人たちでも、夜はドレスアップして「オペラ」に行くような習慣があるようですが、日本には社交界があるわけでなく、一般の人がドレスアップして「オペラ」に行く習慣もありません。むしろ「ドレスアップするより快適な服があればいい」と楽な方向に振れていて、「外に出ないから着飾る必要がない」「宝石もいらない」となってしまいます。「何故日本人はそういう楽しみ方が出来ないのだろう」と将来が不安になってしまいます。
 これから私たちが目指すのは、「いかにしてお客様の満足度を上げるか」で、それにお応えできる技術を向上させていかなくてはならないと思っています。しかし、世の中の人に「ドレスアップする習慣」を付けてもらう事は私達の努力では実現出来ません。だから、これから一番やりたいと思っているのは「着飾る文化もある世界の市場に出ていく」事です。
 日本のお客様のニーズに応えられているという事は、世界のお客様のニーズにも応えられるという事だと思っています。しかしいくら良い物を作っても、お客様にそれが伝わらなければ良い製品とはいえません。一方で自分の「こだわり」も必要だと思ますが、お客様が分かってこそ「評価」につながるので「どこまで伝わるか」を考えるのが私にとっていちばんの葛藤です。
 父と社長を交代したのが2005年(平成17年)で、交替した初めの10年間は父も工場の中で仕事をしていましたが、父が常に工場にいる事がなくなってからは、「私の作りたいもの」を作れるようになり、自分の表現もできるようになった事で会社が可愛くなり「ここまでやってきた物を残していきたい」と欲が出てきました。  最近四人の子供のうち大学生の三男が「誰かがやらなくてはいけないんでしょ。」というようになってきました。夢を実現していくためにある程度の売上増を確保しつつ、職人などの後継者の育成も課題に頑張っています。
 世界進出といっても、私たちが作るのは「日本のビーズで袋物を作る」事は変わりません。これからも精進しつつこの夢を実現していきたいと思います。
有限会社 柏ビーズ
ひと針ずつ刺繍を仕上げていく
仕立てをするためのミシン類
有限会社 柏ビーズ
がま口の内側も手造り
表側と裏地を仕立てて長財布が完成する
有限会社 柏ビーズ
Alles gute(アレス・ゲーテ)ドイツ語で「全てうまくいきますように」という幸運のメッセージで、「成功を願っている」「ご多幸を」などの意味で使う言葉です。
企業名 有限会社 柏ビーズ
事業
概要
ハンドバッグ製造販売
住所 (本社・工場)
〒277-0852 
千葉県柏市旭町1丁目10-5

(浅草店)
〒111-0032 
東京都台東区アサクサ1-16-11
電話
番号
04-7143-4181
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従業員 13名
資本金 300万円
(2023/7/10)


〈編集後記〉
 
 インタビューをさせて頂いた本社のショールームにはたくさんのビーズと製品が並んでいました。私の中でビーズは高級品というイメージはありませんでしたが、ひとつひとつがもはや芸術品のようで、製品ではなく「作品」という呼び方が正しいと感じました。実際のバッグで具体的に縫製の状態や絵柄合わせなども見せていただき、刺繍の現場も見せていただきましたが、世界で通用する物だと思いました。柏ビーズさんの製品が世界に羽ばたいていくのは遠い将来ではないでしょう。今後も柏ビーズさんを注目していきたいと思います。
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