千葉というと落花生のイメージが強く、他の農産物があまり取り上げられませんが、実は多数の農産物が国内生産量で上位を占めています。ただし、国内生産量一位のものはそれほど多くはありません。数少ない一位のひとつが梨です。
最新のデータではありませんが、平成28年(2016年)のデータでは、千葉県の梨の生産量は、32,700tと2位の茨城県24,800tに大きく差をつけて全国一位を誇っています。市町村別の統計では、生産量1位が白井市で18.8%、2位が市川市の16.8%で、ふなっしーで有名になった船橋の生産量は、実際には4位です。
千葉県の梨は、温暖な気候のため関東地方の中では最も早く梨が開花し、8月から9月にかけて収穫されます。東京にも近く、古くは江戸時代から千葉の梨は高い評価をされてきました。現在、県内で生産されている主な品種は、以下のような時期に収穫されています。
梨は日本で栽培されている果物の中でもその歴史は古く、中国を原産とし、弥生時代から食べられていたといわれています。日本書紀には、梨の栽培が奨励されていたとの記述もあります。貴族の間では、儀式などに使われたり、和歌に詠まれたりと、日本人とは永い付き合いのある果物です。
千葉県で栽培が始まったのは江戸時代で、現在の市川市八幡地区の川上善六氏が美濃国大垣(現在の岐阜県)で技術を学び、持ちかえって栽培したのが最初だといわれています。幸いなことに、県北の台地は富士山の噴火などでできた関東ローム層で、水はけが良く梨の栽培に適していたため、江戸に出荷された梨はで高級品としてもてはやされました。これがきっかけで、千葉県内の産地は拡大していきました。
梨の定番品種の二十世紀は、鳥取が日本一の生産地ですが、その発祥は千葉県松戸市でした。明治27年(1898年)に松戸市在住の松戸覚之助氏が裏庭のゴミ捨て場に生えていた梨の木を発見し育てたものが始まりで、農学者の渡瀬寅次郎氏や池田伴親氏らが、「来る二十世紀には王座を成す梨になるだろう」ということから二十世紀と命名しました。
●梨を地域ブランドとして販売する
千葉県内にはいくつもの梨の生産地があり、そのうち3つの地域で地域団体登録商標を取得しています。地域団体登録商標とは、地域の名称と商品などの名称を一般的な文字で表示できる商標で、一定の範囲で知られているという事実を元に、事業協同組合、農業協同組合などの団体で取得する商標です。
千葉県内の梨は、市川が「梨」の文字を漢字とひらがなの使い分けで2種、白井市と船橋市もそれぞれ地域団体登録商標を取得し、地域ブランドとして差別化をはかっています。
梨の生産地では、果物としての販売のほか、材料として梨を使った和菓子、洋菓子、ワイン、ブランデー、ジュース、酢など様々な商品が開発されています。販売方法にも特徴があり、最盛期の梨の生産地付近では、たくさんの販売小屋を見かけます。それは、通常の農産物の販売ルートではなく、梨狩りや生産者による直売で販売されているからです。その量は、生産高の70%を占めているといわれています。小売店に置かれている梨は、店頭に並ぶ時に良い色になるように、青いうちに収穫しますが、直販している梨は木で熟してから収穫しているので、おいしさがまったく違うからです。
千葉の梨発祥の地、市川市を通る国道464号線の北総線大町駅付近は、通称「大町梨街道」と呼ばれ、道沿いに約50件の梨農家の直売所が軒を連ねています。また、八千代市では八千代市村上付近の国道16号の沿線に多く見られます。
江戸時代から続く千葉県の梨、これからが本格的に出回る季節です。千葉の美味しい恵みを是非味わってください。
(2018/8/9)